多重債務者対策の一環として,債権者が業として行う金銭消費貸借(営業的金銭消費貸借)に限定して適用される特則が,第2章(第5条から第9条まで)として新設されました。
(1) 元本額区分の適用の特則(第5条関係)
第1条第1項が定める上限金利規制について,営業的金銭消費貸借が同一の当事者間で複数ある場合には,元本区分額は,既存の貸付残高と新たな貸付元本額との合計額に応じて決せられるとするもの
(2) みなし利息の範囲の特則,賠償額の予定の特則(第6条,第7条関係)
営業的金銭消費貸借に関し,出資法の上限利率が年20%に引き下げられることに伴い,民事上は適法であるのに刑事上は処罰の対象となるという事態が生じないようにするため,みなし利息の範囲及び賠償額の予定について特則を定めるもの
(3) 保証料の制限等(第8条,9条関係)
営業的金銭消費貸借において,貸金業者と提携した保証業者に保証料を取得させる方法により上限金利規制を潜脱することを防止するため,保証業者による保証が行われる場合には,利息と保証料とを合算して上限金利規制の対象とするもの
■ 従前の規定を収めた第1章についても,判例により空文化されていた第 1条第2項及び第4条第2項が削除されています。
■ 第2章において,一定の事項を政令に委任する規定が新設されたことか ら,この委任事項を定めるものとして,「利息制限法施行令」(平成19年政令第330号)が制定され,改正後の利息制限法と同時に施行されます。
※金融庁が公表しているQ$A
(1) 総量規制とは
Q 総量規制とは何ですか?
A 借り過ぎ・貸し過ぎを防ぐために設けられた新しい規制です。具体的には、貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合は、新規の貸付けをしてはならない、という内容です。
例えば、年収300万円の方は、貸金業者から100万円までしか借りることができないということになります。
Q 貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超えている場合、超えている額をすぐに返済しなければならないのですか?
A 年収の3分の1を超える借入れがある場合でも、貸金業者から新規の借入れができなくなるだけで、直ちに年収の3分の1までの返済が求められるわけではありません。契約どおりに返済を続けてください。
Q 年収の3分の1を超える借入れをすると、借り手が処罰されるのですか?
A いいえ。年収の3分の1を超える借入れがあるからといって、利用者の皆さんが行政処分を受けたり、刑罰を科されることはありません。
Q 複数の貸金業者から借入れがあります。1社からの借入れが年収の3分の1を超えなければよいのですか?それとも、すべての借入れの合計が年収の3分の1を超えないことが必要ですか?
A 複数の貸金業者から借りている場合、全ての貸金業者からの借入れの合計が、年収の3分の1以内であることが必要です。
例えば、年収300万円の方が、貸金業者Aに80万円の借入れがある場合、貸金業者Bからは、20万円(300万円×1/3-80万円=20万円)までしか借りることができません。
Q 借入残高が年収の3分の1を超えているかどうか、貸金業者はどのようにして判断するのですか?
A 貸金業者からの借入残高のデータは、厳格な情報管理のもと、「指定信用情報機関」に集められることとなっています。貸金業者は、指定信用情報機関を利用し、借り手の借入残高を把握します。
また、借り手の年収については、基本的には「年収を証明する書類」を借り手から受け取ることで、把握する仕組みとなっています。
(2) 年収を証明する書類
Q 「年収を証明する書類」には、どのような書類があるのですか?
A 「年収を証明する書類」としては、法令上、以下の書類が定められています。
1 源泉徴収票(直近の期間に係るもの)
2 支払調書(直近の期間に係るもの)
3 給与の支払明細書(直近の2カ月分以上(地方税額の記載があれば1カ月分)のもの) 【下線部分については、現在、内閣府令の改正に向けてパブリックコメントを実施中】
4 確定申告書(直近の期間に係るもの)
5 青色申告決算書(直近の期間に係るもの)
6 収支内訳書(直近の期間に係るもの)
7 納税通知書(直近の期間に係るもの)
8 所得証明書(直近の期間に係るもの)
9 年金証書
10 年金通知書(直近の期間に係るもの)
Q 貸金業者からお金を借りる場合、誰もが「年収を証明する書類」を提出しなければならないのですか?
A 規制上は、個人がお金を借りる場合(リボルビング契約の借入枠を設定する場合も含む)、
1 ある貸金業者から50万円を超えて借りるとき
2 他の貸金業者から借りている分も合わせて100万円を超えて借りるとき
のどちらかに当てはまれば、「年収を証明する書類」の提出が必要となります。それ以外の借入れであれば、自己申告に基づき年収を確認することとなります。
Q 現在、借入枠は設定されていますが、借入残高はありません。「年収を証明する書類」を提出する必要がありますか?
A 「年収を証明する書類」を提出しない場合、個々の貸金業者の判断で、借入枠(キャッシング枠)が減額される場合があります。
Q 専業主婦で、収入がないので、「年収を証明する書類」を提出することができません。どうすれば借りることができますか?
A 配偶者の同意を得て、借入れをすることができる場合があります。その際は、配偶者の年収を証明する書類、借入れについての配偶者の同意書などが必要となります。
(3) 総量規制の対象となる貸付け
Q 住宅ローンや自動車ローンの借入れがあるので、借入残高が年収の3分の1を超えてしまいます。これ以上借りられなくなるのですか?
A 住宅ローンや自動車ローン(※)は、総量規制の適用除外となっています。したがって、住宅ローンや自動車ローンがあるため、借入残高が年収の3分の1を超えていたとしても、総量規制には抵触しません。
※ 住宅ローン、自動車ローンについて
住宅ローンや自動車ローンのうち、貸し手が銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協等の金融機関である場合、そもそも、貸金業法の適用がある貸付けではないため、総量規制は適用されません。
Q 貸金業者から事業資金を借りているので、借入残高が年収の3分の1を超えてしまいます。これ以上の借入れはできないのですか?
A 法人向けの貸付けは総量規制の対象外となっています。また、個人事業者の方は、事業・収支・資金計画を提出し、返済能力があると認められる場合は、借入残高が年収の3分の1を超えていたとしても、新たな借入れを行うことができます。
Q 銀行(信用金庫、信用組合、労働金庫、農協等)からの借入れも合わせると、借入残高が年収の3分の1を超えてしまいます。これ以上の借入れはできないのですか?
A 総量規制は、貸金業者からの借入れを対象としており、銀行の貸付けは貸金業法の規制(総量規制)の対象外です。したがって、銀行等からの借入れを合わせた結果、借入残高が年収の3分の1を超えていたとしても、ただちに総量規制には抵触しません。
また、銀行のカードローンも、一般の銀行等の借入れ同様、総量規制の対象とはなりません。
Q 貸金業者から年収の3分の1を超える借入れがありますが、クレジットカードのキャッシングを使うことはできますか?また、クレジットカードで買い物をすることはできますか?
A クレジットカードを使用した借入れ(キャッシング)については、総量規制の対象となりますので、年収の3分の1を超える借入れがある場合、新たな借入れはできません。
一方、クレジットカードを使った商品購入(ショッピング)は、貸金業法の規制の対象外ですので、年収の3分の1を超える借入れがある場合でも、クレジットカードで買い物をすることは可能です。
【金利規制に関する質問】
Q 法律が変わり、上限金利が下がるという話を聞きましたが、どのように変わるのですか?
A 法律上の上限金利には、
1 利息制限法の上限金利(超過すると民事上無効):貸付額に応じ15%~20%
2 出資法の上限金利(超過すると刑事罰):改正前は29.2%
の2つがあります。
これまで、貸金業者の場合、この出資法の上限金利と利息制限法の上限金利の間の金利帯でも、一定の要件を満たすと、有効となっていました。これが、いわゆる「グレーゾーン金利」です。
他方、金利負担の軽減という考え方から、今回の改正により、平成22年6月18日以降、出資法の上限金利が20%に引き下げられ、グレーゾーン金利が撤廃されます。これによって、上限金利は利息制限法の水準(貸付額に応じ15%~20%)となります。なお、利息制限法の上限金利を超える金利帯で貸付けを行った場合、上限金利を超える部分の金利は民事上無効となり、そのような貸付けを行うことは行政処分の対象にもなります。出資法の上限金利を超える金利帯での貸付けは、刑事罰の対象です。
【その他の質問】
Q 急に借入れができなくなり生活が苦しくなりました。どうすればよいのですか?
A 貸金業法上、貸金業者は、借入れ、返済に関する相談又は助言などの支援を実施することができる団体を紹介するよう努めることとなっています。 また、現在の借入れを借り換えることなどにより、月々の返済負担が緩和される場合もあります。このような点について、一度、借入先の貸金業者にご相談ください。
一方、借金の返済のために、新たな借入れを行うことは、多重債務に陥る可能性があります。返しきれないほどの借入れがあってお困りの場合には、お近くの多重債務相談窓口にご相談ください。
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