現行民法における債権者代位権についての規定は,わずかに同法第423条の1か条のみ。
債権者代位権は,本来的には,金銭債権を有する代位債権者が,債務者の責任財産を保全し,強制執行の準備をするための制度であるといわれている。また,判例はさらに,代位債権者が,第三債務者に対して,被代位権利の目的物である金銭を直接自己に引き渡すよう請求することを認めており,これによれば,代位債権者は,受領した金銭の債務者への返還債務と被保全債権とを相殺することにより,債務名義を取得することなく,債務者の有する債権を差し押さえる場合よりも簡便に,債権回収を図ることができる。
・債権回収機能を否定する方法
本来型の債権者代位権の存在意義を債務者の責任財産を保全することに求め,債権回収機能を否定するという見解を採る場合には,そのための具体的な方法(仕組み)が問題となる。
・被代位権利を行使できる範囲
判例は,代位債権者が本来型の債権者代位権に基づいて金銭債権を代位行使する場合において,被代位権利を行使し得るのは,被保全債権の債権額の範囲に限られるとしている。
・本来型の債権者代位権における保全の必要性-無資力要件
現行民法は,債権者代位権の行使要件について,「自己の債権を保全するため」(民法第423条第1項本文)という抽象的な規定を置くのみである(この要件は,一般に「保全の必要性」といわれている。)
1 無資力要件の要否
判例(最判昭和40年10月12日)は,「債権者は、債務者の資力が当該債権を弁済するについて十分でない場合にかぎり、自己の金銭債権を保全するため、民法四二三条一項本文の規定により当該債務者に属する権利を行使しうると解すべきことは、同条の法意に照らし、明らかであ」るとして,本来型の債権者代位権の行使要件として債務者の無資力を必要としている。
・ 登記申請権の代位行使の場面における無資力要件
代位債権者は,本来型の債権者代位権に基づいて,債務者の登記申請権(私人が国家機関である登記官に対して登記を要求する公法上の権利)を代位行使することができる(不動産登記法第59条第7号)
●転用型の債権者代位権
債権者代位権は,債務者の責任財産の保全とは無関係に,主に非金銭債権(特定債権)の内容を実現するための手段として,転用されることがある。
判例の転用例としては,
1.登記請求権を保全するために登記義務者の有する登記請求権を代位行使するもの
2.不動産賃借権を保全するために賃貸人の有する所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使する。
※下記の内容が提示されている
・確立した債権者代位権の転用例について,それぞれの固有領域で個別に規定を設ける
・転用型の債権者代位権の一般的な根拠規定を設ける
●要件・効果等に関する規定
(1) 被保全債権,被代位権利に関する要件
被保全債権に関する要件について,現行民法第423条第2項は,被保全債権の履行期が未到来の場合には,原則として債権者代位権を行使することができないことを規定している。
(2) 債権者代位権を行使するための要件-債務者への通知
現行法の下では,代位債権者は,債権者代位権を行使する前にあらかじめ債務者に対してその権利を行使すべき旨を催告する必要はないとされているが,これに対しては,最大の利害関係人である債務者の知らないまま債権者代位権が行使され,債務者の財産管理権への介入がされることは相当でないとの批判もある。
(3) 善良な管理者の注意義務
現行民法は,代位債権者の地位等に関する規定を置いていない
(4) 費用償還請求権
債務者と代位債権者とが,債務者を委任者,代位債権者を受任者とする一種の法定委任関係に立つことを前提とすれば,代位債権者が債権者代位権の行使のために必要な費用を支出した場合には,委任における受任者と同様に,債務者に対して費用の償還を請求することができる(民法第650条第1項)
● 第三債務者の地位
(1) 抗弁の対抗
現行民法は,第三債務者の地位についての規定を置いていないところ,通説は,第三債務者が債務者に対して有している抗弁を代位債権者に対しても主張することができるとしている。
(2) 供託原因の拡張
第三債務者は,代位債権者との間に直接の法律関係がないため,被保全債権の有無等の判断をするための情報を全く持っていないところ,現行の債権者代位制度は,このような第三債務者に対して,裁判所の関与もないままに代位債権者が直接請求する権利を付与している点で,第三債務者の地位に対する配慮が欠けているとの指摘がある。
●債権者代位訴訟
現行法は,債権者代位訴訟についての規定を置いておらず(ただし,判決の効力の及ぶ範囲に関しては,民事訴訟法115条1項2号がある。),このような状況に対しては,債権者代位訴訟が提起された場合の債務者による被代位権利の行使への影響や他の債権者の権利行使への影響などについての明確な規定が置かれることが望ましいとの指摘もある。
(1) 債権者代位訴訟における債務者の関与
現行の債権者代位訴訟に対しては,判決の効力が債務者に及ぶ(民事訴訟法第115条第1項第2号)にもかかわらず,債務者が手続に関与する機会が保障されていないなど,債務者の地位への配慮に欠けるとの指摘がされている。
(2) 債権者代位訴訟が提起された後に被代位権利が差し押えられた場合の処理
現行法は,債権者代位訴訟が提起された後に被代位権利が差し押さえられた場合の処理に関する規定を置いていないところ,判例は,債権者代位訴訟が提起された後に,他の債権者が被代位権利を差し押さえて支払を求める訴え(取立訴訟)を提起したとしても,代位債権者の債権者代位権行使の権限が失われるものではなく,裁判所は代位債権者と他の債権者の請求を併合審理し,これらをともに認容することができるとする。
●裁判上の代位(民法第423条第2項本文)
現行民法第423条第2項本文は,被保全債権の履行期が未到来の場合であっても,裁判上の代位によれば,債権者代位権を行使することができると規定している。この規定を受けて,非訟事件手続法第2編第1章(第72条から第79条まで)に,裁判上の代位に関する手続規定が設けられている。
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