1消費貸借の成立―要物性の見直し
消費貸借は,金銭その他の物の交付があって初めて成立する要物契約とされている(民法第587条)。
実務では,金銭が交付される前に公正証書(執行証書)の作成や抵当権の設定がしばしば行われていることから,消費貸借を要物契約として規定していると,このような公正証書や抵当権の効力について疑義が生じかねないという問題点が指摘されている。
消費貸借について,これを諾成契約として規定する方向で見直すべきであるとの考え方が提示されている。
消費貸借を諾成契約とする場合であっても,無利息消費貸借については,合意のみで貸す債務が発生するとするのは適当ではないとして,書面による諾成的消費貸借と要物契約としての消費貸借とを並存させるという考え方や,書面によるものを除き目的物の交付前における解除権を認めるべきであるという考え方が提示されている。
2利息に関する規律の明確化
消費貸借における利息については,条文上,貸主の担保責任に関する規定(民法第590条第1項)において言及されているにすぎないが,現実に用いられる消費貸借のほとんどが利息付消費貸借であることを踏まえ,利息の発生をめぐる法律関係を明確にするために,利息を支払うべき旨の合意がある場合に限って借主は利息の支払義務を負うことを条文上も明らかにするべきであるとの考え方が提示されている。
3目的物に瑕疵があった場合の貸主の担保責任
消費貸借の目的物に瑕疵があった場合の貸主の担保責任について規定する民法第590条に関し,売買における売主の担保責任及び贈与における贈与者の担保責任の規律が見直されるのであれば,利息付消費貸借における貸主の担保責任の規律は売買における売主の担保責任の規律に対応するものに,無利息消費貸借における貸主の担保責任の規律は贈与における贈与者の担保責任の規律に対応するものに,それぞれ改めるべきであるとの考え方が提示されている。
民法第590条は,消費貸借の目的物に隠れた瑕疵があった場合の貸主の担保責任について,利息付消費貸借においては,貸主は瑕疵のない物に代える義務を負い,それと並んで,損害賠償責任も負うことを(第1項),無利息消費貸借においては,瑕疵を知りながら借主に告げなかったときにのみ同様の責任が生ずることを(第2項後段),それぞれ規定している。
4消費貸借の終了
民法第591条第2項は,消費貸借において,借主はいつでも返還をすることができると規定しているが,他方で,同法第136条第2項が,期限の利益を放棄することによって相手方の利益を害することはできないとも規定していることから,返還時期が定められている利息付消費貸借における期限前弁済の可否や,期限前弁済が許されるとした場合に貸主に生ずる損害(約定の返還時期までの利息相当額)を賠償する義務の有無が,条文上は必ずしも明らかではないとの指摘がある。
返還時期の定めのある利息付消費貸借においても期限前弁済をすることができ,その場合には,借主は貸主に生ずる損害を賠償しなければならないことを条文上も明らかにすべきであるとの考え方が提示されている。
5抗弁の接続
消費貸借の規定の見直しに関連して,消費者が物品若しくは権利を購入する契約又は有償で役務の提供を受ける契約を締結する際に,これらの供給者とは異なる事業者との間で消費貸借契約を締結して信用供与を受けた場合に,一定の要件の下で,借主である消費者が供給者に対して生じている事由をもって貸主である事業者に対抗することができる(抗弁の接続)との規定を新設するべきであるとの考え方が示されている。
・割賦販売法
現行法においては,割賦販売法が,第三者与信型の販売信用のうちの一定の類型のものについて,抗弁の接続の規定を設けている。
(1) 包括信用購入あっせん
包括信用購入あっせんとは,購入者等(購入者又は役務の提供を受ける者)が供給者から物品等を購入するなどする際に,信販会社等のあっせん業者から発行されたクレジットカード等を提示するなどすることによって,あっせん業者にその代金に相当する額を直接的又は間接的に供給者に支払ってもらい,その後,あっせん業者に対してその額を2か月を超える期間にわたる支払を予定するなどして支払っていくという取引形態である(割賦販売法第2条第3項第1号,第2号)。包括信用購入あっせんにおいては,購入者等は,一定の適用除外事由がある場合を除き,供給者に対して生じている事由をもって,あっせん業者に対抗することができるとされている(同法第30条の4,第30条の5)。
(2) 個別信用購入あっせん
個別信用購入あっせんとは,購入者等が供給者から物品等を購入するなどする際に,信販会社等のあっせん業者から発行されたクレジットカード等を利用することなく,当該物品等の購入等に関して,あっせん業者にその代金に相当する額を直接的又は間接的に供給者に支払ってもらい,その後,あっせん業者に対してその額を2か月を超える期間にわたる支払を予定して支払っていくという取引形態である(割賦販売法第2条第4項)。
(3) ローン提携販売
ローン提携販売とは,購入者等が供給者から物品等を購入するなどする際に,金融機関から発行されたカード等を提示するなどすることによって,供給者又は供給者から委託を受けた信用保証会社に保証人となってもらって金融機関からその代金に相当する額の融資を受け,その後,金融機関に対してその額を2か月以上の期間にわたり,かつ,3回以上に分割して支払っていくという取引形態である(割賦販売法第2条第2項第1号,第2号)。
ローン提携販売における抗弁の接続の規定は,同法の平成11年改正によって新設されたものである。
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