要件―意迫の事情の基準
ア 前提となる後見事務の範囲
被後見人死亡による後見終了の場面における急迫の事情は被後見人の相続人又は法定代理人に後見事務の引継ぎを待てないほど時間的に差し迫った事情であると考えられます。しかし,時間的に差し迫ってさえいれば、どのような事務でも応急処分義務の対象となるわけではなく,被後見人の生前における後見事務の範囲であったもの,又はそれと関連性が強いものに限り対象となります。後見人は,被後見人に関する事務を全権的,包括的に行っていたわけでなく,財産管理と身上監護に関するものに限り事務を行っていたにすぎません。そうすると,応急処分義務に基づく死後事務の範囲も,従前の後見事務の範囲内であることが大前提となります。上記の範囲外の死後事務,例えば埋葬・火葬を含む葬儀は,被後見人の死そのものから生じる事務であり,財産管理にも、身上監護にも直接的は該当しない事務といえますので、応急処分義務に基づく事務とするには疑義があります。死後事務における応急処分義務の範囲は,従前の事務の範囲を前提としますので,おのずと限定的に解釈されることになるでしょう。
イ 引継ぎの可否
急迫性の有無は事務を引き継ぐ相続人等の存否,状況などをもとに判断します。
被後見人の死亡後,後見人は財産の引渡し及び事務の引継ぎのために相続人調査をすることになります。ある事務を緊急に行う必要性に迫られているときに相続人側に引継ぎ先が存するか否か、引継ぎ先が存するとして事務を引き継げる状況にあるか否かが,急迫性の有無を判断する基準となります。
実務上、また現行法の解釈から急迫性があると思われるものは以下のものがあります。
1 相続人調査の結果,相続人不存在が判明したものの,相続財産管理人が選任されておらず,事務を引き継ぐことができないとき。
2 戸籍上,相続人の存在が判明しているものの,相続人の住所・居所が知れないとき、又は住所・居所が判明したものの連絡が取れないとき。
3 相続人が外国などの遠方にいて,直ちに事務を引き継ぐことができないとき。
4 相続人が意思無能力状態・行為能力喪失状態のとき。
他方,共同相続人のうちの1人に事務を引き継ぐことができるとき,相続財産管理人その他代理人等(法定代理人又は任意代理人を問わない。)に事務を引き継ぐことができるときは急迫性はないといえるでしよう。なお,共同相続人の1人に財産を引き継ぐ場合には様々な実務上の問題点がありますので注意が必要です。相続人が関わりを拒絶しているとき,相続人間で遺産について争っているときは相続人の側で事務を引き継ごうとすればできるのに相続人側の事情により事実上、事務の引継ぎができないので、このような場合にまで応急処分義務を認めるのは妥当とはいえず,原則として急迫の事情があるとはいえないと筆者は考えます。なお、仮に相続人に不測の損害が発生したとしても,それは相続人側の責任により発生した損害であるため,後見人に対して責任を追及することはできません。
応急処分義務を負う期間は相続人等が事務を引き継ぐことができる状況になるまでです。この期間内であるかどうかはまずは後見人側が判断し義務を継続することになります。最終的には客観的な判断によることとなりますが,管理計算の終了が応急処分義務終了の1つの目安になるでしょう。
ウ 不測の損害が生じるおそれ
被後見人死亡による後見終了の場面の急迫の事情は,前述の引継ぎの可否と,不測の損害が生じるおそれがあることを考慮することになります。
事務を処理しなくても.被後見人が損害を受けるおそれがないのならばその事務は応急処分義務の要件を満たさないこととなり,したがって、後見人はその事務をなすべき義務を負いませんし応急処分義務として行うこともできません。ここでの損害とは例えば金銭債務の支払の場面で考えると、債務の履行が遅滞することにより遅延損害金が発生することになりますが,これをもって損害と捉えると、極端な例でいえば1日の履行遅滞又は1円の損害金の発生をもって応急処分義務となってしまい金銭債務の支払全般にわたって後見人が義務を負うという結果となり,妥当とはいえません。損害の発生は損害の程度,損害が拡大する可能性などを総合的に勘案して、客観的に判断することになります。
契約・成年後見・不動産
●成年後見関連の裁判例
●成年後見関係事件(H24.1月~12月)-最高裁判所事務総局家庭局が公表
申立件数、成年後見関係事件の終局事件、審理期間、申立人と本人との関係、本人の男女別・年齢別割合、申立の動機、鑑定、成年後見人等と本人との関係
平成24年末時点の成年後見制度の利用者数は、16万6千人余り。総人口の0.1%を上回る程。
認知症高齢者数は、約305万人。
相続手続き・遺言書作成・遺産分割協議書
平成25年度より相続税の改正が成立(平成25年3月29日)、平成26年1月1日・平成27年1月1日施行となりますが、今までよりも増税になり、相続対策が必要となります。
H26.1.1より小規模宅地等の特例の改正(一棟の二世帯住宅・老人ホームに入所)
H27.1.1より相続税改正で増税、小規模宅地等の特例の改正(小規模宅地等の特例の土地の面積が拡大(240平方メートル→330平方メートル)、特定事業用等宅地等及び特定居住用宅地等の併用(330平方メートル+400平方メートル))
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について―H25.4.17文部科学省が公表
「子・孫に贈与」-緑の贈与制度、風力、地熱、太陽光、バイオマス、小水力などの再エネを対象とした投資証券や、太陽光パネルなどの設備を贈る非課税となる新制度。
政府・与党は検討に入り、秋にまとめる税制改正大綱に盛り込み、平成26年から導入予定。
東京都世田谷区相続専門―相続対策・遺言書・生前贈与・相続関係の判例
婚外子の相続差別違憲・無効の決定(H25.9.4最高裁判決)
婚外子の相続格差を認めた民法の規定は、遅くとも相続が発生した2001年7月当時、憲法14条に違反しており無効
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生活支援会員制度(【契約で騙されないための防犯対策】(悪質商法、詐欺商法等)【相続・遺言・成年後見制度・離婚・不動産等】)
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